制御盤の据付工事で注意すること

制御盤は出来上がってからが本番です。

どれほど優れた設計の盤であっても、現場の据付工事が不完全であれば、水が浸入する、揺れに耐えられない、扉が開かなくて点検できない、受電日に間に合わないといった重大なトラブルに直結します。

この記事では、制御盤の据付工事における7つの工程と各工程での確認事項、失敗が起きやすいポイント、そして既設盤の更新における段取りや費用・工期の変動要因について、専門家の視点から詳しく解説します。

なお、本書は制御盤の基礎知識や配電盤との違いではなく、現地の据付工事に絞って解説しています。

福岡の電気工事会社として、設計・製作から現地据付・試運転まで一貫して行っている立場で、重量物の搬入からミリ単位の水平・垂直調整、強固なアンカー固定に至るまで確実な施工のポイントをお伝えします。 

LICENSED CONTRACTOR 福岡県知事許可(一般)
電気工事業 第98211号
TRUST & TRACK RECORD 創業24年
福岡の電気インフラを支える実績
制御盤の据付工事の7つの工程
  • 設置環境の確認
  • 設置場所・スペースの決定
  • 基礎・アンカーの計画
  • 搬入計画
  • 据付・固定・配線接続
  • 受電前試験・試運転
  • 引き渡し・記録

上記の7つの工程で進みます。

現場で起きるトラブルの多くは、据付当日の作業ミスではなく、①〜④の「据付前」の確認不足が原因です。 

工程 主にやること 発注者側が確認・準備すること よくある失敗
①設置環境の確認 温度・湿度・粉塵・水・塩害・日射・振動を確認 屋内か屋外か、水洗いや粉塵の有無を伝える 軒下だからと屋内盤を選んで浸水
②設置場所・スペース 保守スペース・扉の開閉・搬入搬出動線・他設備との干渉 設置予定場所の図面と写真 盤の前に通路が取れず点検できない
③基礎・アンカー コンクリート基礎・チャンネルベース・アンカー選定(耐震) 床の構造(スラブか二重床か、無筋か) 承諾図にアンカーの径・本数が無いまま施工
④搬入計画 経路の実測・揚重方法・資格者・道路使用許可 搬入経路の幅・高さ・段差、クレーン設置スペース 当日になって曲がり角を通らない
⑤据付・固定・配線接続 墨出し・水平垂直・アンカー締付・接地・ケーブル引込 停電の可否と時間帯 引込口の防水不足で盤内に水が溜まる
⑥受電前試験・試運転 絶縁抵抗・接地抵抗・相回転・シーケンス・I/O・試充電 立ち会いの可否、機械側の準備 機械側の準備が遅れて試運転が組めない
⑦引き渡し・記録 試験成績書・完成写真・盤内清掃・予備品 図面・成績書の受領 設定値の記録が無く後でトラブル

盤の中身(回路・部品)と据付(基礎・固定・接続)は別物ではなく、
据付側の不備によって「水が入って基板が壊れる」「振動でネジが緩む」「扉が開かず点検できない」といった問題が起きます。

どれほど優れた設計であっても、据付が不完全であればその性能を100%発揮することはできません。 

制御盤は、周囲温度・湿度・粉塵・水のかかり方・塩害・直射日光といった設置環境に合わせて筐体(箱)の仕様を選ばないと、据付後に故障や腐食が起きます。

屋内用の盤の標準的な使用条件は周囲温度−5〜40℃程度・相対湿度45〜85%程度で、
屋外・水回り・海沿いではこれに加えて防水性能(IP等級)と塗装・材質の検討が必要です。 

JIS C 8480:2016(キャビネット形分電盤)の標準使用状態では、屋内用は周囲温度−5〜40℃・24時間平均35℃以下・相対湿度45〜85%・標高2,000m以下とされています。

公共工事の盤仕様書(大阪市)も同様の数値を採用しています。

メーカーの技術資料によると、盤内温度が10℃上がると電解コンデンサなどの電子部品の寿命が半分程度になり、湿度が60%を超えると腐食が急速に進むため、設置前の環境把握が不可欠です。

対策としては、換気ファン・熱交換器・盤用クーラー・スペースヒーター(結露対策)の選択肢があります。

夏季の高温期に屋外・屋根下に置く盤は日射と外気温の両方で盤内温度が上がるため、7〜9月に竣工する現場では特に注意が必要です。  

JIS C 0920に基づくIP等級(第一特性数字:固形物に対する保護、第二特性数字:水の浸入に対する保護)の確認が重要です。

業界団体の技術資料では、「エントランス内など雨線内だからと屋内用を選定したが、強風時に雨がかかり内部に水が浸入した」という失敗事例が挙げられています。

なお「雨線内」とは、軒先から壁に向かって下方45°の内側を指します。柱上やポール設置はIP44以上、水洗いのある場所は防水・防塵性の高い筐体やステンレス製の検討が必要です。

粉塵の多い現場では、換気口の防塵フィルターと定期清掃を前提とした選定を行います。 

海塩粒子は雨がかかる屋外では雨で流されますが、雨線内では付着したまま残り発錆しやすいため、「屋根の下だから安心」とは言えません。

また、積雪地域の道路脇では融雪剤(塩化カルシウム)により塩害地域と同等の対策が必要です。

沿岸部の屋外盤では耐塩・重耐塩仕様の塗装やステンレス製を検討します。

盤用クーラーメーカーの資料等によると、
直射日光が長時間当たる南面や西面に正面や背面が面しない向きにすることや、
建物・フェンスの日陰の利用、風通しの良い場所の選定、照り返しを避ける工夫が推奨されます。

筐体の色は淡色系を選び、濃色や透過色、監視窓付きは長時間の直射日光が当たる場所には避けるべきです。

また、夏型結露と冬型結露の両方に対する換気ファンやヒーターなどの対策を講じます。 

制御盤の設置場所は、「操作しやすく、点検のためのスペースが取れ、将来の更新時に搬出できる場所」が基本です。

内線規程では、配電盤・分電盤の設置場所として電気回路や開閉器が容易に操作できる露出した安定した場所を挙げており、湿気が充満する場所や物置の中などは避けることとされています。 

  • 盤の外形寸法と扉の開き方向(出入口ドアや他の盤への干渉)
  • 照明・自火報・空調ダクト等の建築設備との干渉
  • ケーブル引込口・配線ルート(上引込・下引込・ピットの有無)
  • 保守点検スペースと管理動線
  • 将来の増設・更新時の搬入出経路

自立形の制御盤は、コンクリート基礎またはチャンネルベースにアンカーボルトで固定します。

アンカーの種類・太さ・本数は盤の重量と重心位置から耐震計算で決めるもので、
「とりあえずM12を4本」のように決めると地震時に引き抜かれて転倒する危険があります。

失敗例:「基礎とベースの間をコーキングしたら、盤の中に水が溜まった」 

キャビネット工業会の事例によると、屋外用自立形でコンクリート基礎と基台の間をコーキング処理したために内部に水が溜まったトラブルが報告されています。

基礎に水抜き孔や溝を設ける、あるいは設けない場合は基礎と基台の間をコーキングしない、基礎上面に勾配を設けるといった対策が必要です。

また、無筋のシンダーコンクリートの上に置く場合、アンカーは下の構造体(スラブ)から立ち上げた基礎に打つべきです。 

実例:アンカーの径・本数を確認しなかった制御盤工事が「不当」と判断された 

会計検査院の令和3年度決算検査報告によると、埼玉県さいたま市の災害復旧工事において、
制御盤のコンクリート基礎と鉄骨架台を緊結するアンカーボルトの径や本数が施工承認図に示されていなかったにもかかわらず、そのまま承諾して耐震性を確認していなかった事例が指摘されました。

改めて計算すると、引抜力は1本あたり22.29kN(許容値12.00kN)、
別の施設でも12.30kN(許容値9.20kN)と、いずれも許容値を超えており、
工事費5,769,704円が不当と判定されています。

製作会社と据付会社が別の場合に抜けやすいため、承諾図(据付図)にアンカーの仕様が明記されているかを発注者側でも確認することが重要です。

制御盤は数百kg〜1t超になることがあり、搬入は「経路を実測し、揚重方法と人員・資格を決め、必要なら道路使用許可を取る」計画作業です。

当日に「曲がり角を通らない」「床が持たない」ことが判明すると、工程全体が止まります。 

搬入経路の実測:幅・高さ・曲がり角・段差・エレベーター・床耐荷重 

据付図で外形・梱包込み寸法・重量を確認し、経路上の最小幅・最小高さ・曲がり角・段差・エレベーターの寸法や積載荷重、床の許容積載荷重(スラブ許容値)を実測します。

揚重方法と資格:クレーン・フォークリフト・台車・チェーンブロック

屋外基礎への据付はラフタークレーン、屋内はフォークリフトやハンドリフト、ローラー台車、チェーンブロックを組み合わせて搬入します。盤は重心が高く転倒しやすいため、転倒防止の支えを講じます。 

また、つり上げ荷重1t以上の移動式クレーン運転や玉掛け、最大荷重1t以上のフォークリフト運転などは労働安全衛生法施行令第20条に基づく就業制限業務です。

移動式クレーンは1t以上5t未満なら小型移動式クレーン運転技能講習の修了者、5t以上は移動式クレーン運転士免許を持つ者でなければ運転できません(クレーン等安全規則第68条)。

道路使用許可と近隣調整 

公道にクレーンを据え付けたり、ブームを道路上空に張り出して作業を行う場合は、道路交通法に基づく道路使用許可の対象となります。

管轄警察署への申請には車両位置やブーム旋回範囲、架空線との離隔などの図面が必要となり、日数に余裕を持った工程組みが不可欠です。

また、強風時は施工を見合わせるなどの安全管理を行います。

一体で入らないとき:分割搬入・現地組立

大型の屋外盤などで一体での搬入が困難な場合は、製作段階から分割して現地で組み立てる計画を立てます。 

据付当日は、墨出し→架台・ベースの設置→盤の吊り込み→水平・垂直調整→アンカー締付→ケーブル引込・接続→接地の順で進めます。

盤面の直線性と水平垂直のゲージ確認、引込口の防水、通電前の接地完了が重要なポイントです。

ケーブル引込は下からが基本であり、上や横から入れる場合はケーブルを一度持ち上げて引き込み、電線管には水抜き孔を設け、引込口をコーキングします。

現場での穴あけ加工時は、切粉を確実に除去し切断面を補修塗装します。

接地工事(C種・D種)は通電前に必ず行い、アース線をガス管や水道管、避雷針等に接続しないようにします。

接地抵抗の基準はC種10Ω以下、D種100Ω以下(地絡時0.5秒以内の自動遮断装置がある場合は500Ω以下)です。

高圧ケーブルと低圧ケーブルの離隔(15cm以上)や、電源線と制御線の分離配線、ケーブル札の取り付けなどを確認します。

電源を入れる前に絶縁抵抗測定・接地抵抗測定・配線締付・端子番号照合を行い、
受電後に電圧・相回転確認、シーケンス試験、I/Oチェック、機械との組合せ試運転、試充電へと段階的に進めます。 

受電前:絶縁抵抗・接地抵抗・目視確認 

低圧電路の絶縁抵抗は、開閉器または過電流遮断器で区切れる電路ごとに、
使用電圧300V以下で対地電圧150V以下なら0.1MΩ以上、300V以下のその他は0.2MΩ以上、300V超は0.4MΩ以上を確保する必要があります(電気設備に関する技術基準を定める省令第58条)。

ただし、PLCやインバータ、制御基板を搭載した盤ではメガーの高電圧で基板が破損する恐れがあるため、測定前に機器を切り離すなどのメーカー指示に従う必要があります。

受電後:電圧・相回転→シーケンス試験→I/Oチェック

三相の相回転が逆でないかを確認し、
無負荷での運転・停止・非常停止・インターロック動作を見るシーケンス試験や、
センサー・スイッチ等の入力とモーター・電磁弁等の出力を1点ずつ照合するI/Oチェックを行います。

設定値リストを作成し引き渡し書類に含めます。 

試運転と試充電:機械と組み合わせて、一定時間連続で動かす 

機械設備との組合せ試験を経て、一定時間の連続運転(試充電)を行い、停電・復電時の安全性の確認も実施します。 

引き渡し時に受け取るもの 

試験成績書、完成図(据付図・単線結線図・展開接続図)、設定値リスト、予備品リスト、完成写真などを受け取り、将来の点検に備えます。

稼働中の工場で制御盤を入れ替える場合、
停電時間を数時間〜1日程度に抑えるために「停電前」「停電中」「復電後」の段取りを徹底します。

新設盤の据付・基礎・アンカー固定・新設幹線の敷設は停電前に済ませ、
停電中は切替接続と試験に集中します。 

停電前

停電前

新設盤の搬入・据付・アンカー固定・機器組立、幹線・制御線の接続直前までの敷設、消耗品の事前確認、手順書の作成、関係者との調整

停電中

停電中

開路・検電・短絡接地・表示施錠・区画(安全原則)、既設ケーブルの切離しと新設盤への接続、絶縁抵抗測定、最終確認

復電後

復電後

電圧・相回転確認、シーケンス・I/O確認、機械試運転、旧盤の撤去

停電可能な曜日や時間帯の選定、生産計画との調整、機械側メーカーの立ち会い、
旧盤の処分方法(古い盤におけるPCB含有機器の有無の確認含む)などをあらかじめ取り決めておきます。

自家用電気工作物では、電気事業法の保安規程に基づき電気主任技術者と緊密に連携して工事を進めます。 

制御盤の据付工事費は、盤の重量・面数、基礎の新設有無、クレーンの要否、夜間・休日作業の有無、既設盤の撤去・処分、現場までの距離によって変動します。 

¥

搬入・揚重費

クレーン・ユニック・運搬

増える条件 屋外基礎への吊り込み、2階以上、道路使用許可が必要な場合
¥

基礎工事費

コンクリート基礎・チャンネルベース

増える条件 屋外新設、既設基礎が使えない場合
¥

据付・固定費

墨出し・水平調整・アンカー

増える条件 面数が多い、耐震クラスが高い場合
¥

配線接続費

幹線・制御線の接続、接地

増える条件 ケーブル距離が長い、ピット新設、取り合いが複雑な場合
¥

試験・試運転費

各種試験・調整

増える条件 I/O点数が多い、立会日数が増える場合
¥

停電・時間外費

休日・夜間の切替作業

増える条件 稼働中設備の更新の場合
¥

撤去・処分費

旧盤の撤去・処分

増える条件 PCB含有機器の有無、大型盤の場合

据付作業自体は1〜3日程度ですが、基礎の養生期間や道路使用許可の申請日数、停電日の調整を考慮し、
納品日から逆算して数か月前からのご相談をおすすめします。

  • 製作と据付の一貫対応:据付図やアンカー・基礎・搬入計画を製作段階から一体で進められるか。 
  • 電気工事業の許可と有資格者:自家用電気工作物の工事に必要な第一種電気工事士などの資格や建設業許可を有しているか。 
  • 確実な書類提出:試験成績書や完成図面がきちんと提供されるか。

制御盤は機械と同じ部屋に置かないといけませんか?

内線規程にそのような決まりはありません。

操作性や保守スペースで決定しますが、離れる場合は手元開閉器を設けます。

盤の前はどれくらいスペースを空ければいいですか? 

法令上の明確な数値規定はありませんが、扉を全開にして人が立てる幅(1m前後)を目安とします。

屋外に置く場合、屋根の下なら屋内用の盤でも大丈夫ですか?

強風時に雨が吹き込むため屋外用(IP23以上)を選定してください。

海沿いでは屋根下であっても塩分が残りやすくなります。

アンカーボルトの太さや本数はどう決めるのですか? 

盤の重量・重心・固定間隔から耐震計算により決定します。

コンクリート基礎はいつ作りますか?

基礎は据付前に養生期間も含めて先行して打設します。

据付にクレーンや道路使用許可は必要ですか?

屋外基礎や高所への据付ではクレーンを使用し、公道にかかる場合は道路使用許可が必要となります。

稼働中の工場で盤を入れ替える場合、停電はどれくらい必要ですか? 

事前準備を徹底することで、停電時間は数時間〜1日程度に抑えられます。

盤は別の会社で作ってもらっています。据付と配線だけ頼めますか?

現地調査のうえ対応可能ですのでご相談ください。

制御盤の据付工事は、設置環境やスペースの確認、耐震性を考慮した基礎・アンカーの計画、そして綿密な搬入・停電の段取りが成功の鍵を握ります。

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